ペルシャ絨毯の歴史

05カシャーンのバザー天井

絨毯の歴史は古く、今から遡ること3千年前とも5千年前ともいわれています。誰が絨毯を織り始めたかは定かではありませんが、中央アジア、西アジアがその起源と思われます。保温、断熱、弾力、堅牢という利点をもつ絨毯は、苛酷な自然条件のこの地域の人々にとって欠かせない必需品として誕生、発達してきました。やがて、絨毯は、民族の移動や文化、文物の交流とともに、ユーラシア大陸一帯に広く伝播しました。

ペルシャ絨毯の産地

 手織り絨毯は、いわゆるカーペット・ベルトと呼ばれる中央アジア、西アジアのシルクロード沿いの諸地方で織り継がれるようになりました。西はトルコから、東は中国まで、それぞれ特徴のあるさまざまな絨毯が織られています。たとえばトルコで織られる絨毯は、アナトリア・カーペットと呼ばれ、15世紀のヨーロッパ絵画にもよく描かれています。イランで織られる絨毯は、ペルシア絨毯と呼ばれ、シルクロードの手織り絨毯の中でデザイン的にも洗練され、高度な技術を駆使して作られているため、高い評価を受けています。

ペルシャ絨毯のデザイン

 ペルシャ絨毯を装飾文様の上で分類すると、直線や多角形、かぎ形などで構成されている幾何学文様の絨毯と、草花文様やアラベスクなどの柔らかな曲線で構成されている絨毯に大別することができます。
 それぞれ長い伝統をもち、そのモチーフにはさまざまな意味が込められているといわれています。
※模様の意味
●ライオン=権力、勝利  ●鳩=平和
●犬=忠誠心、世話  ●クジャク=新性
●ラクダ=健康、幸福  ●ザクロ=富、満足
●杉木=死後の世界  ●柳木=悲しみ、死
●生命の木=内なる人生(精神)

ペルシャ絨毯のフォーマット

 ペルシャ絨毯のフォーマットには特別な名前があります。
●ボシティ 60×80cm
●ザロニム 100×150cm
●パルデ 150×250cm
●ガリ 300×200cm以上
●ザロチャラク 80×120cm
●ドザール 1300×200cm
●キャルギ 200~350×300~600
●ケナレ 40~100×120~600

ペルシャ絨毯の素材

 絨毯の素材(パイル糸)として最も一般的に用いられるのは羊毛で、この他に山羊やラクダなどの毛、綿、絹などがあります。縦糸には、木綿が一般的に用いられるようになりましたが、部族民の絨毯では羊毛を使用することもあります。また、より細かい文様を織り出すために、絹を縦糸に用いる場合もあります。

ペルシャ絨毯の織り方

 ペルシャ絨毯は、縦糸、パイル糸、横糸で構成されています。縦糸に色糸(パイル糸)を絡め、ナイフで適当な長さにカットします。これが1ノット(結び)です。横一列を結び終えると横糸を通し緯打具(いだぐ)で打ち込み、鋏でパイル糸の長さを刈り揃えます。この反復が、絨毯の織りを完成させていきます。ですから1枚の絨毯が織り上がるまでには、数ヶ月から数年という気の遠くなるような時間がかかります。結び方には、大きく分けてペルシア結び(センネ結び)とトルコ結び(ギヨルデス結び)の2通りがあります。トルコ結びは、主にトルコ系の民族によって用いられる手法で、ペルシア結びは、トルコ結びに比べ、より繊細な織りが可能な手法として、主に都市の絨毯やトルコ系以外の民族の間で採用されているといわれています。
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ペルシャ絨毯の制作工程

デザイン
 一般に、都市でつくられる絨毯の場合、その制作工程はデザインのスケッチから始まります。専門のデザイナーがデザインを描き、これに基づいて色づかいを支持した意匠紙が作られ、織り手に渡されます。
染め
 デザインに基づいて必要な色糸が染められます。染料の調合や、色出しの技術は代々受け継がれる染職人の秘伝となっているといわれています。
織り
 まず、織り機に縦糸を巻きつけることからスタートします。この縦糸にパイル糸である色糸を絡めて絨毯の文様を織り上げていくのです。
洗い
 絨毯は織り上がると、長期にわたる汚れを落とすため、専門の洗浄工場で洗いにかけられます。
刈り込み
 最後に、パイル糸の長さを一定にするため、専門家の手によって刈り込みが行われます。このように、さまざまな人の手を経て、ペルシャ絨毯は世界中へと送り出されていきます。
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